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クリニカルレポート

NSK Clinical Report 12根管治療を成功に導く超音波スケーラーチップの有効活用

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 阿部 修

医療法人社団 平和歯科医院 院長

阿部 修

はじめに

 根管治療を成功させるためには、根管内の感染源の除去を筆頭に、適切な根管形成、そして根管洗浄などの基本操作を質高く行うことが重要となる。しかしながら、歯髄腔の狭窄が認められる症例は、髄腔開拡そのものが困難であり、さらには根管口や根管が見つからないような症例も少なくない。また、再根管治療症例においては、根管壁や根尖部に残るガッタパーチャポイントや破折ファイルなどの異物除去が必要な症例も多く、治療は技術的にも時間的にも大変な労力を要するものとなる。
 歯内療法は根管内という極めて小さな、狭い空間で行われることから、闇雲にエアータービンなどを使用することは、パーフォレーションや根管形態の破壊などを引き起こすリスクを伴う危険な操作となる。以上のことから歯内療法を安全に行ううえで、超音波スケーラーの応用は大変有効である。特に様々な種類のエンド用チップを有するバリオスのエンドシリーズは、ファイルタイプからダイヤモンドコーティングタイプまで数多く揃っており、繊細な異物除去からダイナミックな感染象牙質の切削除去に至るまで、幅広く対応が可能となっている。ここでは症例をベースに、バリオスチップの歯内療法への応用について具体的に解説したい。

Case 1.

ダイヤモンドラウンドチップによる髄床底部の感染象牙質除去(E15D):図1-3

 下顎第一大臼歯近心根付近の髄床底には、解剖学的にデンジャーゾーンと呼ばれる象牙質の薄い部分があり、その周囲の切削には特別な注意が必要である。エアータービンなどの使用により、簡単にパーフォレーションを引き起こす危険性があることを認識すべきである。そのような症例に対して、E15Dは極めて有効であると感じている。髄床底と一体化したようなエンド三角を含む感染歯質を、E15Dで剥がすように除去することができる。それによって、パーフォレーションや過剰形成など、様々なリスクを軽減することができると考えられる。

Case 2.

狭窄根管におけるエンド三角の除去と根管口明示(E7D, E4D): 図4-9

 髄腔開拡と根管口の明示は、根管治療において最も時間をかけるべき重要な基本処置であり、難症例に分類される狭窄根管においては特にリスクを伴う難しい処置となる。
 狭い髄腔を徐々に拡大し、適切なエンド三角の除去及び根管口付近に添加した象牙質の除去には、細いバータイプのE7Dや、先端部のみダイヤモンドコーティングされていないE4D等のチップが有効である。

(E7D)


(E4D)

Case 3.

イスムス部の感染源除去(Uファイル):図10-13

 イスムスは対岸同士の象牙質がほぼ接触した狭い空間であり、その除去が必要な場合には、Uファイルのような細いファイルタイプが有効である。線のような空間の感染状態を確認しながら、15号や20号などの細いUファイルを低振動で使用し、狭い空間を少しずつファイリング操作することで、感染歯質の除去及び拡大形成が容易となる。

Case 4.

破折ファイル除去(Uファイル+E7): 図14-19

 破折ファイル除去は、根管内に食い込んで破折したファイルに直接触れられるようにするため、破折ファイルの上部周囲に空間を作る必要がある。根管内の極めて小さな空間での作業となるため、細いUファイルの操作は大変有効である。その操作はマイクロスコープ下において行うことが望ましいだろう。Uファイル使用時のパワー設定値は最小からとし、必要に応じて少しずつパワー設定値を上げて使用する。破折ファイルの上部が露出し動きが出たならば、E7を使用して、より高い振動を直接与えることで一気に破折ファイルが除去される。

おわりに

 歯内療法を長期的な成功に導くためには、丁寧な感染源の除去のみならず、可能な限りの歯質保存が求められる。狭く複雑な歯髄腔の中で、その目的を達成することは容易ではないが、超音波振動による繊細な操作は、現代のMinimally Invasive Endodonticsの概念に合致するものである。特に本稿で示したような治療が困難な症例には、様々な用途に応じて選択できるエンド用チップが重要となる。バリオスチップはその多くのニーズに対応可能であるため、歯内療法において有用であると考える。

※医院での事例紹介や個人的な感想も含まれます。



参考文献
1)Plotino G, Pameijer CH, Grande NM, Somma F. Ultrasonics in endodontics: a review of the literature. J Endod. 2007;33:81-95.
2)阿部修 マイクロスコープとNiTiロータリーファイルによる GPのAdvanced Endodontics 医歯薬出版, 東京, 2014



阿部 修 Shu Abe

  • 2000年 東京歯科大学卒業
  •     医療法人社団平和歯科医院勤務
  • 2006年 東京歯科大学大学院歯学研究科(微生物学)修了(歯学博士)
  •     東京大学医科学研究所幹細胞組織医工学研究部門客員研究員(~2008年)
  •     医療法人社団 平和歯科医院 開業


  • 東京歯科大学非常勤講師
  • 日本歯内療法学会 国際交流委員
  • 関東歯内療法学会 常任理事