NSK Clinical Report 15MIコンポジットレジン修復でのエアースケーラーチップの有効活用

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田代歯科医院

田代 浩史

臼歯部メタルフリー修復でのMI窩洞形成法

　近年では、コンポジットレジン修復の適応範囲が広がり、その情報は歯科医療従事者を通じて多くの患者に広まりつつあると感じる。このような状況の中、臼歯部のメタルインレーやアマルガムなど金属材料による修復部位に対して、審美改善と二次う蝕のリスクを低減するために、再修復を希望する患者は多くなっている。多くの場合、非接着修復材料による修復部位の直下には二次う蝕や着色が認められ、金属修復材料撤去後にはMIコンセプトに沿った窩洞形成法を選択する必要がある。今回は、旧アマルガム修復材料の撤去から二次う蝕・着色の除去、更には窩縁部の整理までの一連の窩洞形成の過程を提示する。数種類のエアースケーラーチップを使用してMI窩洞形成し、コンポジットレジン修復によって対応した症例である。回転切削器具特有の振動や機械音など、患者の負担となる環境を極力排除し、かつ診療効率を低下させない治療方法の選択や修復術式について下記に解説する。

窩洞形成終了後、大臼歯部の1級窩洞に対してコンポジットレジン直接修復にて対応することとなった。窩縁部エナメル質へのセレクティブエッチング後、2ステップタイプのセルフエッチングシステム（クリアフィル メガボンド2：クラレノリタケデンタル）を使用して接着操作を行なった。接着操作完了後は、積層充填の第１層目として1.0mm程度の厚さで窩洞底部へのフロアブルレジン（クリアフィル ES フロー High Universal：クラレノリタケデンタル）充填を行った。本症例の窩洞深さは2.5mm程度で、積層充填は第2層目のペーストタイプレジン（エステライトΣクイック OA2：トクヤマデンタル）による最終咬合面形態の再現で完了した。舌側咬頭部分と頬側咬頭部分を2分割で充填し、近遠心に走る中心溝の位置を意識して咬合面を再構築することで、咬合調整量の少ない修復操作が可能となる。窩縁部のエナメル質マージンに対して、スーパーファイン ダイヤモンドコーティングチップ（V-G79）を使用して窩縁部の整理を行うことで、滑らかなエナメル質断面への充填操作が可能となり、本症例でもホワイトマージンの発生リスクを軽減することができたと考える。

前歯部3級修復でのMI窩洞形成法

前歯部のコンポジットレジン修復部位の劣化による審美障害を主訴として来院。12の近心部に小規模な3級修復が行われており、窩縁部の着色と修復材料の変色を認める。患者との相談のうえ、健全歯質への切削を回避したMIコンポジットレジン修復による審美改善を行うこととなった。う蝕除去用のラウンドタイプのエアースケーラーチップを使用して、旧修復材料を慎重に除去、半球状の形態で片面のみ切削可能なダイヤモンド砥粒が付着したタイプのエアースケーラーチップを使用して隣在歯の誤切削に注意しながら窩洞形成の仕上げを行った。このタイプのチップは、切削部の背面は平坦でダイヤモンド砥粒が付着しておらず、切削能力が付与されていない。また、チップ先端は約120°アングルに設定され、窩洞へのアクセスが容易な形状となっている。アングルの内側、または外側に半球状の切削部位が設定され、前歯部の近遠心両側の窩洞形成に使用が可能。窩縁部のエナメル質マージンに対して、スーパーファイン ダイヤモンドコーティングチップを使用して窩縁部を整理して窩洞形成を終了した。

窩洞形成終了後、前歯部の3級窩洞に対して、窩縁部エナメル質へのセレクティブエッチング後、2ステップタイプのセルフエッチングシステム（クリアフィル メガボンド2：クラレノリタケデンタル）を使用して接着操作を行なった。接着操作完了後は、積層充填の第1層目として1.0mm程度の厚さで窩洞底部へのフロアブルレジン（クリアフィル ES フロー High Universal：クラレノリタケデンタル）充填を行った。その後、積層充填の第2層目として、3Dクリアマトリックス内（アダプトセクショナルマトリックス / ブルー モデレートカーブ：Kerr）へのフロアブルタイプCR（クリアフィル ES フロー Low Universal：クラレノリタケデンタル）を充填。光照射後に形態修正を行い、隣接面部分の仕上げ研磨には研磨ストリップ（ニッシン プラスチックストリップス：ニッシン）を使用した。小規模窩洞ではあるが、健全歯質への切削介入を排除してMIコンポジットレジン修復にて審美改善を行うためには、効率良く安全に切削可能な窩洞形成器材が必要不可欠である。本症例を通して、エアースケーラー用のダイヤモンドチップを使用したMI窩洞形成法の有効性を確認することができた。

※医院での事例紹介や個人的な感想も含まれます。